スクフェス三河2025に初参加してきた
前夜祭
委員長自らものづくりをしながら、Tronの人(?筆者は元ネタを追えていない)になりきって場を盛り上げていたのが印象的で、楽しい雰囲気から幕が開いた。
リアルタイムOS研究開発30年の歩み by Hiroaki Takada
「オープンソースで開発するためには資金が必要」。 その資金調達の工夫として、あえて会員種別のロイヤリティを設けず、β版へのアーリーアクセス権を薄く広く公開し、開発資金を確保していたという話があった。最終的にはオープンソース化するものの、“時間軸をずらす”ことで新しい価値を生む設計は非常に学びが深かった。
そして「ドキュメントは重要」という話には首がもげるほど頷いた。まさにADR(Architectural Decision Record)。
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何を決定したのか
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どのような選択肢があったのか
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どの背景で選んだのか、選ばなかったのか
その記録は歴史として、古文書のように価値を持つ。 30年第一線で関わり続けてきた方の言葉は重かった。
当日
見えてきたEV2.0:家電向けのソフトウェアがクルマに載る日 by Manji Suzuki
無人タクシー普及にまつわる課題は法律や倫理の問題がよく語られるが、キャッシュフローの観点から見るとさらにリアリティが増す。
車両はタダではなく、自動運転システムと車体そのもののコストを両方考える必要がある。
利益 = 現金 - {(外付けの自動運転システム) + (車体費用)}
中国で無人タクシーが急速に広まった理由のひとつはEVの安さにある。「安いは正義」。 某𓃬のクルマは1200万円スタート。一方で安価な中国製EVなら、無人タクシービジネスとして現実的な筋がある。
次に語られていたのは「家電としてのEV」の姿。
所有車は「乗る時間」より「放置される時間」のほうが長い。ではその空白時間をどう使うか? 中国では一人用EVをカラオケルームやゲームセンターに改造する動きもあるらしい。
ただ、これは「所有」を前提とした課題。シェアリングエコノミーに生きる人には響きにくい。とはいえ所有の歴史的概念を崩すのは簡単ではない。だからこそ、クルマを“空間の拡張”として再定義する動きが求められるのだろう。
テストを使って透明性を獲得しよう by やまずん
「あなたは、自分の仕事に対して存在否定の眼差しを向けたことがありますか?」 そんな問いかけのように感じた発表だった。
特に印象に残ったのは、テストは“作ってはいけないもの”を考える役割もあるという点。否定的な視点でプロダクトを俯瞰し、エンジニアと落とし所を見つける対話が必要になる。 普段自分が取り組んでいることが言語化されたようで、省みるきっかけになった。
「メカアジャイルのその後 ~実践編~」 ― 顧客検証を阻む“ルールの壁”を越えて ― by YUKI YAMAUCHI
メカを市場に出すには、巨大なパイプラインを通過する必要がある。だからこそ、作る前からシフトレフトで品質を作り込むことが、リードタイムを短縮し、デプロイ速度に直結する。
それはつまり、生産設備の生産性向上=顧客の売上
にも影響を与える。自分たちの仕事が顧客の売上に直結する。このアウトカムは絶対に気持ちいいだろうと思った。
出張!何でもEBMワークショップ団 in 三河 by Tomonari Nakamura ( ikikko )
チームで目標を立て、試行錯誤するワークショップ。 実現可能性はさておき「足掻く体験」そのものが良かった。
解説で特に刺さったのは「4keysはあくまで一部分」という話。 年1リリースでも競合より速ければ十分。他の指標にリソースを割くべきケースもある。全体を見つつ、どこに力を注ぐかを考える重要性を感じた。
資料: 4keysはあくまで一部分の資料
リーン/アジャイル/Teslaを通して見る近未来の自律的チーム - 生成AIはチームの自律性を強化できるか? - Kazutaka Sankai
コンウェイの法則の“超現実版”のような話。
4keysのような指標は現場のもの。本当に経営層が求めるのはシンプルな1つの指標だけ。だからエンジニアにはエンジニアリング以外をさせない。マネジメントを極力減らす。
これが、イーロン・マスクの思想。
その理屈は納得感があり、もっと分析や考察を深めた資料が出てきたらぜひ読みたいと思った。理解できたので、分析された文章や考察の資料や本が上がってきたら読んでみたいと思った。
改めて、“チームで話し合う”を考えよう 〜対話の原則とファシリテーションの視点から〜 by KEN TAKAYANAGI
「場の設計が大事」──まさにこの一言に尽きる。
ファシリテーターとして何を期待するのか、参加者の属性を踏まえて場をデザインすることが重要。 正直、自分にはちょっと難しく「何が難しいのかすらわからないunknown unknown」という感覚だった。悔しさもある。
Art of Hostingの概念を学んでみたい。
まとめ
ものづくりの土壌・三河で、初めてのスクラム界隈のカンファレンスに参加。 秋風が吹き抜ける豊橋で、止まらない熱気に包まれた人々の集まりは圧巻だった。
自分のやってきた仕事の羅針盤は大きく間違っていない、と確認できたし、懇親会でも勇気をもらえた。
企画・運営してくださったスタッフの皆さんに心から感謝しています。また必ず来たいと思います。